「英語がまったく話せないのに、アメリカの学校に通わせて大丈夫だろうか?」
これは、渡航前の私たち家族の最大の不安でした。
我が家の娘は小学2年生の終わりにアメリカへ引っ越しました。英語の予備知識はABCソングが歌えるレベル。そんな娘がどのようにして現地校での学校生活をスタートさせ、言葉の壁を越えていったのか。その過程と親としてのサポートを、実体験に基づいて記録しておきたいと思います。
渡米前の準備:語彙ゼロからのスタート
渡米が決まってからの2ヶ月間、家庭でできる範囲での準備を始めました。
- 英語のYouTube動画(Peppa Pigなど)を日常的に見せる
- 英語の絵本(英語と日本語の対訳本)を毎晩1冊読む
- 自己紹介だけは練習(”My name is 〇〇. I am 〇 years old.”)
当時の本人の反応は、「なんとなく聞いてるけど、よく分からない…」というレベル。それでも、「英語って楽しいかも」と感じてもらえるよう、**“英語嫌いにさせない”**ことを意識しました。
登校初日:親子ともに緊張の朝

現地校に通う初日。事前に担任の先生とのZoom面談は済ませており、学校の雰囲気はある程度つかんでいましたが、当日はやはり親子ともに緊張。
- 朝は「何着ていけばいいの?みんなと違ってたらどうしよう…」と不安顔
- 教室の入口で先生に連れられていく娘の背中を、泣きそうな気持ちで見送る
たまたま同じクラスに、韓国から来たばかりの女の子がいて、すぐに意気投合したのは幸運でした。英語は話せなくても、表情とジェスチャー、遊び心があれば友達になれるということを、子ども自身が身をもって実感した日でもありました。
最初の1ヶ月:言葉がわからない毎日
英語の授業はすべてネイティブスピードで進み、当然ながら娘はほとんど理解できず。
しかし、学校側のサポート体制は充実していました。
- ESL(English as a Second Language)クラスに週3回参加
- 担任の先生が「今から読むよ」「大事なことだよ」などのキーワードをゆっくり・はっきり伝えてくれる
- クラスメイトが「これは“apple”だよ」「トイレはこっち」と教えてくれる
最初は帰宅後に「何もわからなかった」「疲れた」と泣いていた娘が、2週間ほどで“学校楽しいかも”と言い始めたのは、正直予想以上でした。
親のサポート:家でできること、やめたこと

私たち親がやったことは、英語の勉強を無理強いすることではなく、
- 毎日「今日、誰と何したの?」「何が楽しかった?」と日本語で話す
- 「通じなくてもいい。伝えようとすることが大事」と伝え続ける
- 絵日記を書く習慣をつけ、“英語で一言だけ書いてみる”よう促す
逆にやめたことは、
- 文法の細かい勉強(本人が混乱)
- 完璧な発音を求めること(伝わればOK)
- 「頑張らないとダメ」とプレッシャーをかける言い回し
結果として、娘は「英語を習っている」ではなく「英語で遊んでいる」「英語で誰かと通じると嬉しい」と感じられるようになっていきました。
3ヶ月目:初めての“英語で笑えた”瞬間
ある日、学校から帰ってきた娘がこう言いました。
「先生がジョーク言ったの、ちょっとだけ分かって、私も笑えた」
その瞬間の表情は、忘れられません。本人にとって「言葉の壁が少し崩れた」という感覚だったのでしょう。先生が黒板に書いた一言を後から調べたところ、どうやら“ダジャレ”のような英語ジョークだったらしく、
- 英語の音感に慣れてきた証拠
- 内容理解まではいかなくても“文脈”を感じ取れたこと
この日は家族全員で「すごいね!」とお祝いしました。
半年後の変化:話すより“理解する”が先だった

英語学習でよく言われる「聞く→理解する→話す」という順序を実感したのが、半年ほど経ったころ。
最初は“話せない”ことに親として焦っていましたが、実は
- 授業内容をある程度聞き取れる
- 指示に従って行動できる
- 単語ベースで返事ができる
など、「話す前に理解できるようになる」プロセスを経て、少しずつ英語のフレーズも口から出るようになっていきました。
1年後:堂々と“Show and Tell”に挑戦

1年が経つころには、娘が「自分の好きなものを紹介する時間(Show and Tell)」で、好きなキャラクターのぬいぐるみを英語で紹介するというチャレンジを自ら提案。
- 練習は前日から家族でサポート
- 簡単な文章を本人が考え、暗記せず“自分の言葉”で話す練習
- 当日は友達も先生も大きな拍手で応援
先生から「堂々としていて、去年のあの子とは思えなかったよ!」とメールをもらい、涙が出るほど嬉しかったです。
まとめ:言葉は“武器”じゃなく“つながりのきっかけ”
英語が話せない状態から現地校に通い始めた娘が、言葉を少しずつ“自分のもの”として使えるようになるまでの過程は、親にとっても大きな学びでした。
- “伝わる”体験が増えることで、自信がつく
- 学校側の支援体制も、予想以上に手厚い
- 完璧を目指すより、“通じる喜び”を一緒に味わうことが大切
今では、「英語で友達と話せるって楽しいね」と言えるようになった娘。これからも失敗を恐れずに、新しい言葉と文化の中で、自分らしく過ごしてくれたらと思っています。
同じように英語が不安なお子さんを抱えるご家庭に、少しでも希望と安心を届けられたら幸いです。
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