海外赴任辞令が出たその日、わが家の“未来会議”が始まった

渡航準備・出発前

海外赴任が決まったとき、最初にすべきは「家族会議」

突然の海外赴任辞令。喜びと同時に、不安や戸惑いが押し寄せるのは、あなただけではありません。特に家族がいる場合、影響は自分だけでなく、パートナーや子どもたちにも及びます。そのため、まずやるべきことは「家族会議」です。

本記事では、実際に海外赴任を経験した複数のご家庭の体験談を交えながら、「どのような家族会議を開くべきか」「どんな話し合いをすればよいか」を具体的に紹介します。

なぜ家族会議が必要なのか?

不安や疑問を解消する場になる

家族会議の最大の目的は、「不安を共有し、方向性を一致させること」です。特に子どもにとっては、環境の激変に対して心の準備をする必要があります。

体験談:7歳と10歳の子どもを持つAさん一家の場合

「7歳の娘は『○○ちゃんと遊べなくなるの?』と泣いてしまい、10歳の息子は『英語が話せないから無理だよ』と怒って部屋にこもってしまいました。そこで、夫婦で話し合って、夜の時間を“未来トーク”の時間に決めました。YouTubeで現地の学校ツアー動画を見たり、近所のプレイグラウンドの様子を見せたり。1週間ほど経った頃、娘が『ここの公園、すべり台大きくていいね』とポツリとつぶやいたんです。」

パートナーのキャリアや生活に直結する

赴任者本人は会社のサポートが受けられる一方、帯同するパートナーは仕事を辞めざるを得ないケースも。ここをないがしろにすると、後々トラブルの火種になります。

体験談:共働きだったBさん夫婦

「妻は日本で正社員として働いていて、キャリアを中断することに強い抵抗感がありました。家族会議では、将来的に復職するために現地でもできるリモートワークの可能性や、現地でのスキルアップ方法を一緒に検討しました。」

家族会議の進め方:5つのステップ

1. まずは「赴任の背景」を丁寧に説明

赴任がなぜ必要なのか、どのくらいの期間なのか、どこの国か、どんなサポートがあるのか。情報を正確に共有することから始めましょう。

ポイント

  • 嘘やごまかしはNG
  • 不確定要素は「わからない」と正直に伝える
  • 子どもには年齢に応じた言葉で

2. それぞれの「気持ち」を聞く時間を取る

一方的な説明会にならないよう、家族一人ひとりの気持ちを丁寧に聞く時間を設けます。

体験談:小学生の子どもがいるCさん宅

「子どもから『友だちと離れるのがつらい』という話を聞いたときには、正直胸が痛みました。でも、それを聞けたことで、帰国後にまた同じ学区に戻ることを約束できたのはよかったです。」

3. 赴任後の「暮らし」を具体的に描く

現地での住まい、学校、仕事の環境、休日の過ごし方など、日常がどのようになるのかをできる限りリアルに共有しましょう。

おすすめ:地図や写真、YouTubeを活用

  • グーグルマップで周辺環境を確認
  • 現地のスーパーや学校の写真を見せる
  • 現地在住者のVlogを一緒に見る

4. 「選択肢」を提示し、決定は一緒に行う

たとえば、帯同するかしないか、現地校に通うか日本人学校に通うか、住まいは社宅かコンドミニアムか…すべてを一方的に決めず、家族で相談して決めましょう。

体験談:帯同を辞退したDさんの妻

「夫は『できれば一緒に来てほしい』と言いました。でも娘は『来年、中学受験なのに?』と目に涙をためていました。何日も夫婦で悩み、カレンダーを見ながらタイミングを検討。最終的に、夫が『今だけ離れて、また一緒に暮らそう』と提案し、単身赴任を選びました。あの時、無理に帯同を決めなかったことは、今でも正解だったと思っています。」

5. 不安に対する「対策」を立てる

言語の壁、医療、不慣れな文化、子どもの教育、パートナーのキャリアなど、懸念点に対しては可能な限り具体的な対策を考えましょう。

例:よくある不安と対策

不安対策例
子どもの言語現地到着前からオンライン英会話を開始
パートナーの孤独日本人コミュニティや現地ボランティア活動に参加
医療体制国際病院をリストアップし、現地語の医療単語を覚える

家族の一体感が赴任の成否を分ける

赴任が成功するかどうかは、家族が同じ方向を向けるかどうかにかかっています。家族会議は、ただの情報共有の場ではなく、「家族の未来を一緒に描く」大切な時間です。

体験談:帰国後も「家族の絆が強まった」と語るEさん

「大変なことも多かったけれど、あのときしっかり話し合っておいたからこそ、家族がひとつになれたと感じています。何かあるたびに『あの家族会議でこう言ってたよね』と立ち返れる場所になっています。」

家族会議を効果的にするための工夫

時間と場所の工夫

  • 落ち着いて話せる場所を選ぶ(外食よりも自宅がおすすめ)
  • 一度で結論を出さず、何回かに分けて実施する

雰囲気づくり

  • 意見を否定しない
  • 付箋やホワイトボードを使って、視覚的にまとめる

「わが家ではダイニングテーブルに模造紙を広げ、中央に『家族の未来マップ』と題した円を描きました。付箋で『不安』『やってみたいこと』『知りたいこと』を色分けして貼っていくうちに、子どもたちもどんどんアイデアを出してくれました。“週末は現地の公園探検に行く”という目標まで決まりました。」

  • 小さな子どもも参加できる工夫(お絵かきで気持ちを表現)

必ず議事録を残す

  • 話した内容はメモに残して、後から確認できるようにする

まとめ:赴任は「家族の共同プロジェクト」

海外赴任は、人生の転機であり、大きなチャレンジです。しかしそれは「家族の力を試す機会」でもあります。最初に開く家族会議が、その後の数年間の暮らしを左右すると言っても過言ではありません。

不安も悩みもすべて正直に出し合い、家族一丸となって準備を進めていきましょう。あなたの家族にとって、この海外赴任がかけがえのない時間になりますように。


(※本記事は実際の海外赴任経験者の体験談をもとに構成しています。個人情報保護の観点から、一部内容を編集・加工しています)

コメント

タイトルとURLをコピーしました