
執筆者:ニーチェ(当ブログ運営者)
中学生の時に父の海外赴任でアメリカ・カリフォルニア州へ渡航。英語がほとんど話せない状態から現地校に通った経験を持つ。現在は帰国し、社会人として自身の体験を発信中。
この記事の結論:渡航準備でつまずきやすいのは、①ビザ書類の最新確認、②英文書類の正式翻訳、③保険プランの比較選定、④子どもの英文証明書、⑤日本側の転出手続き、の5つです。 どれも「あとでやればいい」が通じない手続きばかりです。体験談を読みながら、自分の準備状況と照らし合わせてください。
海外移住や長期滞在の準備で、多くの人がつまずくのが「ビザ取得」「保険加入」「各種書類手続き」です。
この一連のプロセスは、国によって制度も書式もバラバラで、日本の常識が通じないことも多く、予想外のトラブルに巻き込まれることも珍しくありません。
この記事では、実際に海外生活をスタートした家族のリアルな体験談をもとに、準備段階で苦労したこと・やっておいてよかったこと・失敗から学んだことを詳しく紹介します。
ビザ申請は“情報の海”との戦い

しっかりと細部を確認しないと大使館に何度も足を運ぶ羽目になります。経験者の情報と専門家のチェックを必ずセットで活用してください。
体験談:1回目はフォームが古く、2回目は写真NG、3回目でようやく通った
オーストラリアへの赴任が決まり、最初にぶつかったのが家族ビザの申請でした。 渡航3ヶ月前から準備を始め、公式サイトを見ながら丁寧に書類を揃えました。 家族全員分のパスポートコピー・雇用証明書・給与明細3ヶ月分・健康診断書・証明写真——それなりの量でした。
1回目(午前10時到着・待ち時間約45分)
窓口に書類を提出した瞬間、担当者が「このフォームは旧版です。昨月から新しいフォームに変わりました」と告げました。 雇用証明書の書式も変更されており、会社の人事部に再発行を依頼する必要があることがわかりました。 子どもたちは持参したぬりえで最初の30分は静かにしていましたが、帰り際には「また来るの?」とぐったりした顔で聞いてきました。
2回目(翌週・午前11時到着・待ち時間約30分)
新フォームと再発行した雇用証明書を持参して再提出しました。 書類自体は受け取ってもらえましたが、「証明写真の背景色が白ではなくオフホワイトになっている。規定は純白のみです」と突き返されました。 スマホで撮影してコンビニ印刷したものを使っていたのが原因でした。 「そんな細かいことで」と思いながら、帰り道に写真館に寄って撮り直しました。
3回目(さらに翌週・午前9時30分到着・待ち時間約20分)
写真館で撮影した規格写真・新フォーム・再発行の雇用証明書・全書類を再度持参しました。 担当者がすべてを確認し、「問題ありません」と受理されました。 子どもたちは3回目の待合室では本すら読まず、ふたりでじゃんけんをしていました。 「やっと終わった」と思った瞬間、末っ子が「ねえ、今日はどこかご飯食べに行ける?」と聞いてきて、思わず笑いながら泣きそうになりました。
3回通って気づいた、ビザ申請の落とし穴と対策
| 失敗した内容 | 具体的に何がNGだったか | 対策 |
|---|---|---|
| フォームが古かった | 前月に新版が公開されていた | 提出前日に公式サイトで最新版を再ダウンロード |
| 証明写真の背景色 | オフホワイトはNG・純白のみ | 写真館で「ビザ用・背景純白」と明示して撮影 |
| 雇用証明書の書式変更 | 会社の旧フォームが無効になっていた | 人事部に「最新書式か」を確認してから発行依頼 |
ビザ申請に持参した書類リスト(オーストラリア家族ビザの場合)
- 申請フォーム(最新版・当日公式サイトで確認)
- 家族全員のパスポート原本+コピー
- 雇用証明書(会社発行・英語・最新書式)
- 給与明細(直近3ヶ月分)
- 健康診断書(指定医療機関で受診したもの)
- 証明写真(写真館撮影・背景純白・サイズ要確認)
- 婚姻証明書の英訳(公証済み)
おすすめの情報収集方法
- 経験者ブログ:「○○(国名)ビザ 家族 体験談 202X年」で検索。年度入りで検索すると情報の鮮度が上がる
- 行政書士への事前チェック依頼:費用は1〜3万円程度。精神的な余裕が全く違う
- 在外公館の最新情報:外務省「海外安全情報」および各国大使館の公式ページを提出前日に必ず確認
📌 参考:外務省「各国・地域情勢」https://www.anzen.mofa.go.jp
英文書類の準備に泣いた

「翻訳」と「正式認証済み翻訳」は別物です。知人に頼んだ翻訳書類が3回差し戻された家族の失敗
体験談:翻訳→差し戻し→公証→ようやく受理、かかった日数は42日
子どもを連れてドイツに渡航する際、現地の学校への入学に「出生証明書の英訳付き提出」が求められました。 日本の母子手帳は「公的書類として認められない」と言われ、戸籍謄本を英訳した上で「翻訳者の署名・認証入り」での提出が必要とわかりました。
1回目の差し戻し:知人翻訳(日数:約1週間)
日本語が堪能な知人(帰国子女)に翻訳を依頼しました。 丁寧に翻訳してもらいましたが、提出すると「翻訳者の資格証明がない書類は受理できない」と即却下されました。
2回目の差し戻し:英語が得意な友人翻訳(日数:約10日)
次に英語力の高い友人に依頼し直しました。 しかし「認定翻訳者による翻訳でなければならない」と再び差し戻されました。 「翻訳の質」ではなく「翻訳者の資格」が求められていると、このとき初めて理解しました。
3回目の差し戻し:オンライン翻訳サービス(日数:約5日)
次はクラウドソーシングの翻訳サービスを利用しました。 翻訳精度は高かったのですが、「公証(Notarization)が付いていない」と再度却下されました。
最終的に受理された手順(日数:合計42日)
- 日本翻訳者協会(JACI)のサイトで認定翻訳者を検索・依頼(対面ではなくメールでのやり取り)→ 翻訳完了まで約10日・費用3.2万円
- 翻訳完了後、最寄りの公証役場に持参し公証を取得 → 当日対応・費用約1.1万円
- さらに外務省でアポスティーユ(国際認証)を取得 → 郵送申請で約2週間・費用無料
完成した書類を学校に提出した日、子どもが「やっと行ける!」と飛び跳ねました。 あの瞬間のために42日かかったと思うと、複雑な気持ちになりました。
英訳が必要だった書類・公証が必要だった書類リスト
| 書類 | 英訳が必要か | 公証が必要か | アポスティーユが必要か |
|---|---|---|---|
| 戸籍謄本 | ✅ | ✅ | 国による |
| 出生証明書 | ✅ | ✅ | 国による |
| 婚姻証明書 | ✅ | ✅ | 国による |
| 予防接種記録 | ✅ | ❌(医師発行で可) | ❌ |
| 卒業証明書・成績証明書 | ✅ | 国による | 国による |
📌 参考:外務省「アポスティーユ・認証について」https://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/page22_000533.html
保険の選択肢が複雑すぎる

「とりあえず会社のプランで」は危険です。家族構成・渡航先・医療費水準に合わせた比較が、後の大きな安心につながります。
体験談:キャッシュレス対応の有無で、保険を選び直した
アメリカへの赴任が決まり、会社から「任意で民間の駐在員保険に加入してください」と案内が来ました。 最初に選びかけたのは、年間保険料が家族4人で約52万円の「Aプラン」でした。 補償内容は十分に思えましたが、比較サイトを見ているとき「キャッシュレス対応病院数:12か所」という記載が目に入りました。
「キャッシュレスって何?」と思って調べると、キャッシュレス対応でない場合、受診のたびに数十万円を立替払いして、後から保険会社に請求する必要があるとわかりました。 アメリカでは盲腸の手術で600万円の請求が来るケースもある——そのたびに立替払いするのは現実的ではないと判断し、キャッシュレス対応病院数が350か所以上の「Bプラン」に切り替えました。
保険料の差額は年間約33万円。しかし渡航後に子どもが骨折した際、手術・入院・リハビリすべてがキャッシュレスでカバーされ、自己負担はゼロでした。 「立替払いの心理的負担を買わなくてよかった」と、あの骨折の夜に心底思いました。
海外保険を選ぶ際の比較ポイント
| 確認項目 | なぜ重要か |
|---|---|
| キャッシュレス対応病院数 | 立替払いが不要かどうかは緊急時に大きな差 |
| 緊急搬送の有無 | 現地治療が困難な場合に日本へ搬送できる |
| 歯科・眼科のカバー | 現地の歯科は特に高額になりやすい |
| 妊娠・出産のサポート | 赴任中に妊娠する可能性がある場合は必須 |
| 日本語サポートの有無 | 緊急時に日本語で対応してもらえるか |
おすすめの情報収集方法
・加入前に「実際に保険を使った体験談」を必ず調べる
・保険比較サイト(「たびほ」「グローブパートナー」など)で複数プランを並べて比較
・同じ渡航先の駐在員コミュニティ(FacebookグループやX)での口コミ確認

すでに現地で働いている駐在の方に直接聞いてみるのも手。
子ども関連の書類も油断禁物

「母子手帳があるから大丈夫」は通じません。英文証明書がないと、入園・入学を2週間以上待たされることがあります。
体験談:予防接種証明がなく、入園を2週間拒否された
現地の保育園への入園手続きを進めていたところ、「予防接種履歴の公式証明書がないと入園できない」と言われました。 日本の母子手帳を提示しましたが、「日本語の記録は公式書類として認められない」と一言で却下されました。
急いで日本のかかりつけ医に連絡しましたが、「英訳証明書の発行には2週間かかる」と言われ、その間、子どもは毎朝「今日は保育園行ける?」と聞いてきました。 その質問に「まだだよ」と答えるたびに、申し訳なさと焦りで胸が締め付けられました。 結局、入園は予定より2週間遅れました。
渡航前に用意すべき子ども関連の英文書類
- 英訳付き予防接種証明書:かかりつけ医に渡航1〜2ヶ月前に依頼
- 健康診断結果の英語版:学校・保育園への提出を求められるケースが多い
- アレルギー情報メモ(英語):食物・薬品のアレルギーを英語で記載
- かかりつけ医の紹介状(英語):持病がある場合は必須
- 母子手帳のコピー+英訳サマリー:発育・接種の全履歴を1枚でまとめる
クリニックによっては英文書類のテンプレートを保有しているところもあります。 「英語の証明書をお願いしたい」と渡航1〜2ヶ月前に相談しておくと、スムーズに発行してもらえます。
日本側の手続きも盲点だらけ
「向こうの準備」に追われて、「日本でやるべきこと」を忘れる家族は少なくありません。出国後に発覚すると、一時帰国まで解決できないケースも。
体験談:住民票の除票を忘れ、一時帰国のたびに役所へ
海外移住の際、「転出届」を出さずに渡航してしまいました。 渡航後しばらくして、マイナンバーが失効し、税金関連の書類が届かず、年金の手続きも宙に浮いた状態になっていると知りました。 一時帰国のタイミングで役所に行くと、「最初から説明してください」という状況になり、手続きだけで半日を費やしました。
しかも、子どもの学校への転校届も未提出で、現地の学校への転入手続きに必要な書類が揃っておらず、入学が1週間遅れました。 「日本側は帰ってからでもなんとかなる」という思い込みが、現地でのスタートを遅らせた原因でした。
出国前に必ず完了すべき日本側の手続きリスト
| 手続き | 担当窓口 | タイミング |
|---|---|---|
| 転出届・住民票の除票 | 市区町村役場 | 出国14日前〜当日 |
| 国民健康保険の脱退 | 市区町村役場 | 転出届と同時に |
| 国民年金の手続き | 市区町村役場または年金事務所 | 出国前 |
| 子どもの転校届 | 在籍校・教育委員会 | 出国1〜2週間前 |
| 郵便物の転送設定 | 郵便局 | 出国前 |
| マイナンバーカードの扱い確認 | 市区町村役場 | 出国前 |
管理方法として、GoogleスプレッドシートやNotionで家族と共有できる「出国チェックリスト」を作成し、完了したものを随時チェックする方式が最も抜け漏れを防げます。

日本側の手続きは盲点になりがち・・しっかりとチェックしておきましょう
最後に:海外渡航は“情報戦と根気”の連続
海外渡航の準備は「情報戦と根気」の連続ですが、最初の一歩を踏み出すだけで、あとは意外とスムーズに動き始めます。
体験談に登場した家族全員に共通していた言葉があります。 「もっと早く動いておけばよかった」——これだけです。
今日、この3つから始めてください。
- 渡航先のビザ要件を外務省・大使館の公式ページで確認する。フォームの最新版が出ているかを必ずチェック
- 「転出届」「健康保険脱退」「子どもの転校届」など日本側の手続きを書き出し、締め切りを設定する
- かかりつけ医に連絡し、英文の予防接種証明書と健康診断結果の発行を依頼する(発行まで2〜4週間かかることが多い)
「わからないことを自分だけで抱え込まないこと」が、渡航準備を乗り越える最大のコツです。 経験者の声・専門家のアドバイス・公式情報の3つを組み合わせながら、一歩ずつ準備を進めていきましょう。
やることが多い渡航準備。手続き面だけでなく、家族のケアも大事です。海外渡航前、子どもが泣いた日――不安を和らげた“親のひと言”とは?では、子どもとどう向き合うか詳しく説明しています。家族と向き合う時間も作ってみてください。


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