海外渡航前、子どもが泣いた日――不安を和らげた“親のひと言”とは?

渡航準備・出発前

渡航前、子どもが抱える“見えない不安”とは?

海外転勤や留学、家族での長期滞在など、子どもにとって渡航は大きな転機です。親にとってはワクワクと不安の入り混じるイベントかもしれませんが、子どもにとっては“今ある日常”が大きく揺らぐ体験でもあります。

今回は、実際に海外渡航を経験した家族の体験談を交えながら、「子どもが渡航前に感じた不安」と「親の声かけや対応」についてご紹介します。

「友だちと離れたくない…」という寂しさ

体験談①:小学校3年生の娘の涙

私たち家族がシンガポールに赴任することが決まったのは、娘が小学校3年生の冬でした。学校で仲の良い友だちと毎日のように遊び、誕生日会やクリスマス会も楽しんでいた頃。

娘は布団の中でぽつんと、「なんで、いかなきゃいけないの…」とつぶやきました。

お風呂上がり、濡れた髪のまま。目は赤く、声もかすれていました。

昼間、親友に「3月に引っ越す」と伝えたそうです。「じゃあ、もう誕生日パーティーできないね」って言われたのが、すごく悲しかった、と。

「せっかく仲良くなれたのに、なんでバイバイしなきゃいけないの?」

親としても胸が痛む瞬間でした。

親の声かけと対応

「友だちと離れるのは寂しいよね。○○ちゃんもきっと寂しいと思ってるよ。でも、今はLINEもあるし、ビデオ電話もできる。お手紙も書こうよ。日本に帰ってきたときには、また会えるよ」

実際に娘は、友だちから手紙をもらい、渡航先でもやり取りを続けていました。オンライン上でも“つながり”が保たれていることで、少しずつ前向きになっていきました。

「言葉が通じないかもしれない」という不安

体験談②:英語に自信がなかった息子

中学1年生の息子を連れてアメリカに引っ越すことが決まったとき、本人が最も不安に感じていたのが「英語が話せないこと」でした。

「授業、全部英語なんでしょ?先生が何言ってるか分からなかったらどうしよう…」

それまでは英語塾にも通っておらず、英語にまったく自信がなかった息子。出発の1ヶ月前からは夜に眠れなくなることもありました。

親の声かけと対応

「最初はみんな分からなくて当然だよ。向こうの学校も“英語が母語じゃない子”に慣れてるから、サポートもちゃんとしてくれるはず」

「何が分からなかったかをメモしておくだけでも大丈夫。あとで先生に質問すればいいよ」

「Hello」って言うだけでも、最初はものすごく緊張していた息子。

でも、ある日オンラインレッスンのあと「今日、先生が笑ってくれてちょっと嬉しかった」と言いました。

その一言が、家族みんなにとって大きな安心につながったのを今でも覚えています。

「新しい環境に馴染めるか」の不安

体験談③:内向的な性格の長男の不安

アメリカに赴任することが決まったある家族のケース。小学校高学年の長男はもともと人見知りで、新しい環境になじむのに時間がかかるタイプでした。

「新しい学校、どんな人がいるか分からないし、誰も話しかけてくれなかったら…」

そう口にする息子に対して、母親は次のような声かけをしました。

親の声かけと対応

「最初は誰でもドキドキするよ。でも、向こうにも“新しい友だち”を探してる子がいるよ。無理に話さなくても、“にっこり”するだけで印象って変わるんだよ」

「まずは先生に自分から“よろしくお願いします”って言えたら、それだけで自分を褒めていいと思う」

こうした“スモールステップ”を大切にして声かけすることで、息子自身が「完璧にやらなきゃ」と思い込まずにいられるようになったそうです。

渡航に向けて、親子でできる“心の準備”

家族での「未来日記」を書く

未来の生活を親子で想像するのも、不安を和らげる有効な手段です。たとえば「1年後の自分に手紙を書く」といった活動。

「○月○日、ぼくは英語で友だちに『Good morning』って言えた。サッカークラブにも入って、今日は試合の日。お父さんと一緒に応援に行くんだ」

親子で“ポジティブな未来像”を共有することで、楽しみな要素を育てることができます。

子ども向けの海外生活体験談を一緒に読む

実際に海外生活をした子どもたちのエッセイや動画などを活用するのも一案です。たとえばYouTubeやSNSには、日本人の子どもが現地の学校での生活を紹介するコンテンツが多くあります。

「ほら、この子も最初は不安だったけど、今は友だちもできて楽しそうだね」

自分と似た状況の人のストーリーを知ることで、安心感を得やすくなります。

「一緒に感じ、一緒に乗り越える」ことが大切

渡航前の子どもにとって不安は自然なもの。親としては「励まそう」と焦るあまり、不安を否定してしまいがちです。

「そんなこと気にしなくていいよ」ではなく、「そう感じるのも当然だよ」と共感し、寄り添う姿勢が大切です。

最後に:

大切なのは、“正解”を示すことではなく、“味方でいる”こと。

「どんなときも、ママは味方だからね」

渡航直前の夜、娘の手を握って私がそう伝えた瞬間。

娘はうなずき、何も言わずにそのまま私の腕に顔を埋めました。

海外生活が始まってからも、いくつもの不安や戸惑いはありました。

でも、あのときの“ひと言”が、私たち家族にとって「原点」になったように思います。

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