アメリカ現地校に通い始めた頃、私たち親子にとって最も心配だったのが「トラブルやいじめが起きたらどうしよう」ということでした。文化も言葉も違う環境で、子どもが孤立しないか、嫌な思いをしないか、親としては常に気がかりです。
この記事では、実際に経験したトラブルや、周囲の日本人家庭の体験談を交えながら、アメリカ現地校におけるいじめの対応や、親としてできることについてお伝えします。
最初に起きた“無視”という壁

入学して最初の1週間、我が子がポツリと「誰も話しかけてくれない」と言ったとき、胸が締めつけられる思いがしました。
体験談:
言葉が通じないからか、授業中に話しかけられることもなく、ランチタイムもひとりで座っていたそうです。いじめというより「興味を持たれない」という距離感が、本人には“拒絶”のように感じたようでした。
先生への相談のタイミングと伝え方
悩んだ末、担任の先生にメールで相談しました。直接的に「いじめ」と表現せず、「She’s having a hard time making friends.」と書いたことで、柔らかく伝えつつも、状況を共有できました。
結果:
先生はすぐに対応してくれ、翌週にはクラスメイトに「Buddy(お世話係)」を決めてくれました。その子が授業中もランチ中も一緒にいてくれるようになり、我が子の表情も少しずつ明るくなっていきました。
アメリカの“いじめ”の定義と対応システム

アメリカでは、“Bullying(いじめ)”に対して非常に敏感で、以下のような特徴があります:
- 明確な定義がある(繰り返される、意図的な攻撃など)
- いじめが発覚した場合の対応マニュアルがある
- スクールカウンセラーや心理士が常駐している学校も多い
友人宅の事例:
同じ日本人家庭のAさんの息子さんは、「アジア人」としてからかわれた経験があります。すぐに保護者が学校に連絡したところ、当該児童との話し合い・保護者との面談・カウンセラーとのフォローが迅速に行われたそうです。
カウンセラー制度の活用

アメリカの学校には、School Counselor(スクールカウンセラー)が常駐していることが多く、子どもが希望すれば1対1で話すことも可能です。
我が家の子も、担任の先生のすすめで一度カウンセラーと面談。
本人の感想:
「思ってること話していいって言われて、少しホッとした」
この経験を通じて、子ども自身が「助けを求めてもいいんだ」という感覚を持てたように感じました。
“軽いいじり”にどう対処するか
文化の違いから、冗談やからかいが“いじめ”に見えることもあります。
実体験:
我が子が、ランチにおにぎりを持っていった際、クラスの子に「What is that? It looks weird!(なにそれ、変なの!)」と言われ、ショックを受けて帰ってきました。
ただ、その子には悪意はなかった様子。翌日、別のクラスメイトが「I wanna try it!」と声をかけてくれたことで、子どもも前向きな気持ちになれました。
この時、先生に軽く共有したところ、「子どもの文化背景を説明する活動(Cultural Show & Tell)」の一環で、日本のお弁当文化について紹介する時間を設けてくれました。
親ができる心構えとサポート

1. 子どもとの対話を欠かさない
毎日の「今日どうだった?」という会話が、早期発見につながります。
2. 小さなサインを見逃さない
急に無口になる、学校に行きたがらない、ご飯を残すなど、小さな変化に目を向けましょう。
3. 学校と“味方として”協力する
問題が起きたとき、「攻める」のではなく「協力したい」という姿勢を伝えることで、先生側も前向きに対応してくれます。
4. 日本語で安心を提供する
家では安心して話せる環境をつくり、言葉のストレスから少しでも解放してあげることも大切です。
最後に:海外だからこそ“見守る力”が問われる
異文化の中で子どもが傷ついたとき、親としてはすぐに守ってあげたい気持ちになります。
でも、アメリカの学校には子どもが自分で声をあげるための支援体制が整っているのも事実。
私たち親にできるのは、
- 子どもが困ったときに相談できるように信頼関係をつくること
- 学校と協力して“居場所づくり”をすること
- 過保護になりすぎず、でも放置しない“中間の距離”をとること
文化も言葉も違う環境での子育ては、不安と勇気の連続です。
でも、一つひとつの壁を乗り越えるたびに、親も子も、きっと強くなれる。
この記事が、今まさに同じような不安を抱えている方の支えになれば幸いです。
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