アメリカでの生活を始めてしばらく経った頃、私は思いがけず「ボランティア活動」という新しい扉を開くことになりました。
日本では“ボランティア”というと、災害時の支援や募金活動など、少し堅いイメージがあったのですが、アメリカではもっと日常的で、身近な存在として根付いています。そして何より、参加することによって、地域とのつながり、自分自身の成長、そして子どもとの新しい関係性までもが変化していきました。
今回は、私が実際に参加したボランティア活動と、そこで得たリアルな学びや気づきをお伝えします。
PTA活動で感じた“仲間意識”

最初に関わったのは、子どもの現地校のPTA活動でした。新学期の説明会で「ボランティアを募集しています」との案内があり、軽い気持ちで手を挙げてみたのがきっかけです。
最初の仕事は“ライブラリーヘルパー”。図書室で本を並べたり、子どもたちの貸し出しをサポートしたりする役割でした。英語力が不安だった私は、かなり緊張しながら初日を迎えましたが、他の保護者がとてもフレンドリーで、「あなたの助けがありがたいわ!」と温かい言葉をかけてくれたのが励みになりました。
次第に「次は一緒にフリーマーケットの準備もやらない?」と声をかけられるようになり、学園祭のようなイベントにも関われるように。準備から運営までみんなで協力する中で、“英語力の有無”よりも“参加する姿勢”が大事だと気づかされました。
図書館での読み聞かせ活動

次にチャレンジしたのが、地域図書館でのボランティア活動です。
「子どもたちに日本の絵本を紹介する」イベントがあり、日本人として何かできないかと思い手を挙げました。図書館スタッフと打ち合わせを重ね、英語と日本語のバイリンガル読み聞かせをすることに。
正直、最初は「日本語を聞いてくれる子なんているのかな」と不安でしたが、実際に開催してみると、現地の親子、日本に興味がある人、他のアジア系ファミリーなど、想像以上にたくさんの人が集まってくれました。
あるアメリカ人のママが「子どもが“こんにちは”って言えるようになったの!」と話してくれたときは、本当に嬉しかったです。
この活動を通じて、自分の文化を伝える楽しさと、人とのつながりの尊さを実感しました。
食品配布のサポート活動で学んだ“地域の姿”

学校や図書館とはまた違う形で参加したのが、地域の食品配布センターでのサポート活動です。
月に一度、生活が厳しい家庭や高齢者に向けて、無料で食材を提供する取り組みがあり、そこにボランティアとして加わりました。箱詰め作業、受付、荷物の運搬など、まるで引っ越し作業のような大変さですが、やり終えたあとの達成感は大きなものでした。
印象的だったのは、利用者が「Thank you」と深く感謝を伝えてくれること。日本だと“支援を受けること”がどこか気が引けることのように扱われがちですが、アメリカでは“助け合い”としてとてもオープンに捉えられているように感じました。
その空気感に触れることで、私自身も「助けてもらってもいい」「誰かを助けてもいい」と素直に思えるようになったのです。
子どもと一緒に参加した清掃活動

最後に紹介したいのが、親子で参加した公園の清掃活動です。
地域の小学校が主催したもので、「家族での参加OK」というのが魅力でした。手袋をしてゴミを拾い、公園のベンチを掃除し、植え込みの草を抜く…という地道な作業ですが、終わった後の景色が明るくなったように見えたのは不思議な体験でした。
子どもも「公園がきれいになって気持ちいい!」と満足げで、自分が役に立てたという喜びを素直に感じている様子。
この経験を通じて、“小さな貢献”がどれだけ心を豊かにしてくれるかを家族で実感することができました。
ボランティア活動がもたらした“心の変化”
アメリカでボランティア活動に参加する前の私は、「英語もできないし、知らない土地で何ができるんだろう」と自信がありませんでした。
けれど、実際に一歩踏み出してみると、“役に立ちたい”という思いに国境や語学の壁はないのだと気づかされました。
むしろ、ボランティア活動は「失敗しても大丈夫な場」であり、「お互いさま精神」が根付いている場所。そこでの出会いや経験は、アメリカ生活をより豊かに、そして前向きにしてくれる大きな力になりました。
まとめ:誰かのためが、いつの間にか“自分のため”に

ボランティア活動は、誰かのためにすることのように思えますが、気づけば自分自身の成長や心の安定にもつながっていました。
地域に馴染むきっかけが欲しい方、自信を失いかけている方、日々の生活に少し刺激が欲しい方には、ぜひボランティア活動をおすすめしたいです。
「ありがとう」を交わす関係が広がることで、見知らぬ土地が「自分の居場所」に変わっていく——そんな感覚を、ぜひ多くの方に体験してもらえたら嬉しいです。
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