アジア大会の国歌間違いで、韓国が抗議しています。韓国の試合前に北朝鮮の国歌が流れたこのミスは、海外の大会の話ではありません。起きたのは開催中の愛知・名古屋アジア大会で、運営しているのは日本の大会組織委員会です。この記事では、アジア大会の国歌間違いは誰の責任で起きたのか、韓国がどう抗議したのかを、報道と過去の事例から整理します。
アジア大会の国歌間違いは日本の大会組織委員会の運営で起きた

先に答えを書きます。国歌を間違えたのは、愛知・名古屋アジア大会の組織委員会が運営する会場です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 日時 | 2026年9月18日 |
| 大会 | 愛知・名古屋アジア大会 |
| 競技 | 男子ホッケー A組第1戦 |
| 対戦 | 韓国 対 バングラデシュ(韓国が5-0で勝利) |
| 会場 | 岐阜県各務原市の川崎重工ホッケースタジアム |
| 流れた国歌 | 北朝鮮の国歌 |
大会名に「名古屋」とありますが、ホッケー会場は岐阜県です。そのため「名古屋で起きた」と思っている人と、「岐阜の会場」と聞いて別の大会だと思う人とで、話が食い違っているようです。
組織委員会の会長は大村秀章・愛知県知事です。開幕式は9月19日で、このホッケーの試合は開幕式より前に行われた予選の1試合でした。
組織委員会は事実を認め、次のようにコメントしています。
「大韓体育会には組織委員会よりお詫びを申し上げました」 「再発防止に努めるとともに、ご迷惑をおかけした関係者の皆さまに深くお詫びいたします」
つまり責任を負っているのは日本側の運営で、組織委員会もそれを認めて謝罪した、という状況です。
組織委は「担当者が取り違えた可能性」と説明している
では、なぜ間違えたのでしょうか。
岐阜新聞によりますと、組織委員会は次のように説明しています。
国歌の音源は原則として各国・地域から提供されたもの 会場で再生する際に担当者が取り違えた可能性がある
ここから分かるのは、韓国の国歌も北朝鮮の国歌も、音源そのものは正しく用意されていたということです。間違いが起きたのは、音源を用意する段階ではなく、会場で再生ボタンを押す段階だったことになります。
なお「取り違えた可能性がある」という言い方なので、組織委員会は原因をまだ確定させていません。
国歌を流したのが誰なのかは公表されていない
では、実際に音源を再生したのは誰なのでしょうか。
調べたところ、担当者の名前も立場も公表されていません。組織委員会の職員なのか、会場の音響を委託された業者なのか、ボランティアなのかも、現時点の報道からは分かりません。
ネット上には「アルバイトだったのでは」と書く記事もありますが、裏付けとなる報道は見当たりませんでした。
分かっているのは、組織委員会が「担当者」と呼んでいる1人以上の人物が、会場で再生を担当していたということまでです。
X・掲示板を調べても現場の音響スタッフからの投稿はまだ見当たらない
事情を知る人の声を探すため、X(旧Twitter)や5ちゃんねるを調べてみました。
結論から書きますと、この件について発言している「現場の音響スタッフ」「大会運営に関わっている関係者」らしきアカウントは、9月19日時点で見当たりませんでした。出てくるのは、報道を受けた一般の人の感想(「ひどい」「よりによって」)ばかりで、事情通と言える情報にはまだ届いていない状況です。
代わりに、公になっている過去の類似ケースから運用の一端が分かります。
2018年のAFC U-19選手権で同じミスが起きたとき、AFPは原因を「音響オペレーターのミス」だと報じ、担当者はすでに交代されたと発表しました。国際大会で国歌を流すのは、多くの場合は現場の音響ブースにいる1人の担当者で、事前に用意された音源ファイルを再生ボタンひとつで流す仕組みです。
今回の組織委員会の説明「音源は原則として各国・地域から提供されたもの」「会場で再生する際に担当者が取り違えた可能性」も、これと符合します。つまり、間違いが起きたのは音源そのものではなく、再生ボタンを押す直前のファイル選択の段階だった可能性が高い、ということです。
とはいえ「担当者は誰か」「その担当者に処分は下るのか」については、事情通の投稿・報道ともにまだ出ていません。事実関係が固まっていく続報を待つ段階です。
場内アナウンスは「韓国の国歌」と告げていた
このミスがとくに問題視されているのは、アナウンスと実際に流れた曲が食い違っていたからです。
スポーツソウル日本版(RBB TODAY)によりますと、場内では
「これより韓国の国歌演奏を行います」
と案内されていました。ところが流れたのは北朝鮮の国歌で、最後まで流れきってから運営が誤りに気づいたと報じられています。
韓国の選手たちは胸に手を当てることもなく、困惑した表情を浮かべていたそうです。岐阜新聞も、韓国MBCの映像で選手が戸惑い、緊張した様子だったと伝えています。
その後、英語のアナウンスで「違う曲を流してしまった」と謝罪があり、正しい韓国の国歌は試合開始の直前に流されました。ただ、選手たちは正式な儀式をしないまま試合に入ったと報じられています。
なお、この「その後」の部分は報道によって書き方が違います。THE ANSWERは、謝罪のあとにバングラデシュの国歌が流れ、審判が試合開始時間に追われて韓国の国歌を省略したと伝えていました。正しい国歌がきちんと流れたかどうかは、報道の間でも食い違いがあるということです。
韓国はイ・サンヒョン選手団長の名義で抗議書を送った
韓国側の対応は素早いものでした。
韓国の選手団を統括する大韓体育会は、映像などで事実関係を確認したうえで、イ・サンヒョン選手団長の名義で組織委員会に抗議書を送りました。
大韓体育会の発表は次のとおりです。
「本日、男子ホッケーチームの試合前の国歌演奏で、北朝鮮の国歌が演奏される誤りが発生した」
抗議書で求めたのは、次の3点です。
- 事故の経緯の説明
- 公式の謝罪
- 再発防止
選手団長の名義という点が重要です。競技団体(ホッケー協会)からの抗議ではなく、韓国選手団全体のトップからの抗議なので、この問題をホッケー1試合のミスではなく、大会全体の問題として扱っていることが分かります。
韓国メディアは「よりによって北朝鮮」と反発している
韓国の報道は、かなり強い言葉で伝えています。
RONSPOが紹介した韓国メディアの見出しには、次のようなものがありました。
「あきれた!よりによって北朝鮮国歌を流すのか?」
岐阜新聞によりますと、韓国メディアは「想像もできないミス」と報じています。THE DIGESTは、韓国メディアが「未熟な運営が再び俎上に」と組織委員会を問題視していると伝えました。
さらにCoCoKARAnextは「責任を負うべきは日本」「もう単なるミスとは言い難い」という韓国側の反発を紹介しています。
「よりによって」という言葉が繰り返し使われているのは、韓国と北朝鮮が今も休戦状態にあるためです。ほかの国の国歌と間違えたのとは重みがまったく違い、国際大会での国歌の取り違えは「大きな非礼」だと指摘されています。
2018年にもまったく同じ間違いがあった
実は、韓国の試合で北朝鮮の国歌が流れたのは、今回が初めてではありません。
2018年10月24日、インドネシアで開かれたAFC U-19選手権の韓国対ヨルダン戦で、まったく同じことが起きています。
AFPによりますと、このときは
- 韓国の選手が胸に手を当てて整列していた
- 流れたのが北朝鮮の国歌だと気づき、選手が沈黙した
- コーチが指摘して、正しい国歌が流し直された
という流れでした。原因は音響オペレーターのミスで、担当者はすでに交代されたと発表されています。AFCは次のように謝罪しました。
「AFCは韓国チームと大韓サッカー協会に謝罪し、こうした過ちの再発防止へ適切な策を講じる」
今回との違いは、2018年は国歌が流れている途中でコーチが気づいたのに対し、今回は最後まで流れきってから気づいたという点です。
さらに2024年のパリ五輪の開会式でも、フランス語のアナウンスで韓国が北朝鮮の名前で紹介されるミスがありました。韓国の報道が「再び」「繰り返される」という言葉を使うのは、こうした前例が積み重なっているからです。
2012年ロンドン五輪では逆に北朝鮮が試合を1時間止めた
逆のパターンもあります。
2012年7月25日のロンドン五輪、女子サッカーの北朝鮮対コロンビア戦で、スタジアムの大型スクリーンに北朝鮮の選手を紹介する際、韓国の国旗が表示されました。
CNNによりますと、北朝鮮の選手たちは抗議してピッチを離れ、試合開始が約1時間遅れました。ロンドン五輪の組織委員会は「明らかな誤り」だったと認め、再発防止を約束しています。
韓国と北朝鮮の取り違えは、どちらの側から見ても、試合を止めるほどの問題になりうるということです。今回、韓国の選手が試合を止めずにプレーを続けたのは、むしろ冷静な対応だったと言えそうです。
今大会は開幕前から韓国との火種が続いている
韓国側の反発が強い理由は、国歌の件だけではありません。今大会では、開幕前から韓国とのトラブルが続いていました。
| 日付 | 出来事 |
|---|---|
| 9月15日 | 名古屋港でのクルーズ船接岸記念行事に、豊臣秀吉に扮した人物が登場 |
| 9月17日 | 韓国選手団が到着した空港で、大型の太極旗を掲げることを認められず |
| 9月18日 | ホッケー韓国戦で北朝鮮の国歌が流れる |
豊臣秀吉の件は、選手の宿舎として使うクルーズ船の接岸を記念する行事で、織田信長・豊臣秀吉・徳川家康に扮した人物が登場したものです。秀吉は1592年の朝鮮出兵の当事者で、韓国では歴史上の重大な事件として知られています。大韓体育会は書簡で遺憾を表明し、再発しないよう求めました。
THE ANSWERは、東京五輪で韓国代表が李舜臣(秀吉軍と戦った朝鮮の武将)の言葉を記した横断幕を選手村に掲げたところ、IOCから政治的なメッセージとみなされて撤去された件を挙げ、**「今回の行事も同じ尺度から免れることは難しい」**という韓国側の指摘を紹介しています。
太極旗の件は、韓国選手団が空港に到着した際、大型の国旗を掲げることを空港当局に制止されたものです。中央日報は韓国側の「こんなことは初めて」という声を伝えました。
このほか、今大会は大きな選手村をつくらず、クルーズ船やコンテナ型の仮設宿舎で選手を受け入れています。J-CASTによりますと、韓国のバスケットボール関係者は
「身長が2メートルを超える選手は、ベッドの上で足を伸ばすことさえできない」
と訴えていました。組織委員会は「事態の把握に努めており、適切に対応したい」とコメントしています。
9月15日、17日、18日と、4日間で3回。韓国側から見れば「またか」という流れの中で国歌の件が起きたため、選手団長の名義という重い形の抗議になったと考えられます。
アジア大会の国歌間違いで残る疑問
現時点で分かっているのは、アジア大会の国歌間違いは日本の大会組織委員会が運営する岐阜県の会場で起き、組織委員会が「担当者が取り違えた可能性」と説明して謝罪したこと。そして韓国の大韓体育会がイ・サンヒョン選手団長の名義で抗議書を送ったことです。
一方で、分かっていないこともあります。
- 国歌を再生した担当者が誰なのか(職員か、委託業者か)
- 取り違えの原因が確定したのか
- 正しい韓国国歌が試合前にきちんと流れたのか(報道が食い違っている)
- 組織委員会が抗議書にどう正式に回答するのか
2018年のAFCは担当者を交代させたと発表しましたが、今回の組織委員会は処分や具体的な再発防止策をまだ示していません。アジア大会は10月4日まで続き、韓国代表の試合もまだ数多く残っています。国歌の取り違えをめぐる組織委員会の対応と、韓国側の反応にも関心が集まっています。
新情報が入り次第、追記します。

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