アメリカでの生活は、新しい発見にあふれた刺激的な日々です。しかし、文化や言語の違いは、特に子どもたちの“友だち関係”に大きな影響を与えることもあります。
日本では自然に築けた友情も、アメリカではうまくいかないことがある。今回は、そんな“アメリカでの友人関係に悩んだとき”、親子でどんな会話を重ねて乗り越えたのかを、実体験を中心にお届けします。
言葉の壁にぶつかった初日

渡米して数週間が経ったある日、当時小学校高学年だった娘が帰宅するなり、ぽつりと「やっぱり友だちできないかも」と言いました。クラスでの会話に入っていけないことがつらく、休み時間も一人で過ごすことが増えていたのです。
会話例:
私:「今日は何かあった?」
娘:「話しかけても、何言ってるかわかんないし、向こうも“ハァ?”って顔するから…」
私:「そっか、悔しいよね。でも、話しかけるってすごいことだよ。勇気出してるね」
この会話をきっかけに、毎晩その日の出来事を一緒に振り返る“10分会話タイム”を設けるようになりました。
仲間外れにされたショック
現地のバースデーパーティーに誘われず、クラスのほとんどが出席していたことを後から知ったとき、娘はかなり落ち込んでいました。
言葉にしないまま、食欲も元気もなくなり、ようやく打ち明けてくれたのは数日後の夜でした。
会話例:
娘:「○○の誕生日、みんな行ってたんだよ。でも私、誘われなかった」
私:「それは悲しかったね。気づかずにいたら、なおさらショックだよね」
娘:「なんか、仲間外れって感じがして…」
私:「うん。でもね、それって“あなたが悪い”からじゃないと思うよ。言葉の壁もあるし、相手もまだどう接したらいいかわからないだけかも」
娘:「そうかな…?」
私:「少しずつでいいよ。笑顔で“Hi”って言い続けるだけでも、誰かの心に残るから」
このあと、朝の“Hi練習”を二人でしてから登校するようになりました。最初の1週間は反応ゼロでしたが、ある日「Hey!」と返してくれる子がいて、その日から娘の表情が少し明るくなったのを覚えています。
日本と違う“友情”の距離感

日本では“毎日一緒にいる=親友”という感覚がありますが、アメリカでは“グループを超えて気軽につきあう”文化が主流です。
誰とでもフラットに接する一方で、特定の「親友」にこだわる傾向が薄く、これに戸惑う日本人の子どもは少なくありません。
会話例:
娘:「昨日すごく仲良くなった子、今日は全然しゃべってくれなかった」
私:「それってびっくりするよね。でもね、アメリカの子は“その日の気分”っていうのもあるみたいだよ」
娘:「そっか…なんか、日本と違う」
私:「うん。でも、逆に考えると、いろんな人と仲良くなれるチャンスでもあるかも」
娘:「確かに、グループとかあんまりないかも」
少しずつ、娘は“友情のスタイルの違い”に気づき、それを自分なりに受け入れようとしているようでした。
親ができるサポートとは?

子どもの友人関係は、親が直接介入しにくい分野です。だからこそ、「どうにかしなきゃ」ではなく、「そばにいるよ」と伝える姿勢が大切だと感じました。
私が意識したのは、以下の3つです:
- 話すタイミングを押しつけず、“聞き役”に徹する
- 自分の子ども時代の経験も織り交ぜて“ひとりじゃない”と伝える
- 無理にポジティブにまとめようとせず、感情に寄り添う
会話そのものに「解決策」はなくても、親子の“言葉のやりとり”そのものが、子どもの心の回復を支えてくれていたように思います。
まとめ:悩みも成長の一部として
アメリカでの友人関係に悩むことは、決して特別なことではありません。むしろ、その“壁”と向き合うことで、子どもは異文化理解・感情の表現・自己肯定感といった大切な力を育てているのだと思います。
そしてその過程において、親子の会話は何よりの支えになります。「何もできない」と思うかもしれませんが、子どもにとって“聞いてくれる人がいる”ことは、何よりの安心感です。
海外生活は挑戦の連続ですが、こうした日々の会話の積み重ねが、子どもの心の根っこを強く育ててくれる──そんな実感を込めて、この記事を締めくくります。
コメント