2026年春、ガソリン価格は高止まりが続いています。原因はUAEのOPEC離脱だけではありません。2月28日の米・イスラエルによるイランへの軍事攻撃をきっかけにホルムズ海峡が事実上閉鎖され、世界の石油供給の約20%が止まりました。EIAの予測では原油価格は2026年第2四半期にピークを迎えた後、年末にかけて緩やかに下落する見通しです。ガソリン価格が落ち着くのは、早くても2026年後半になりそうです。
今なぜガソリン価格が高いのか

ガソリン価格が高騰しているのは、ホルムズ海峡の閉鎖という「史上最大の供給ショック」が続いているためです。
2026年2月28日、米国とイスラエルがイランへの軍事攻撃を開始しました。これをきっかけにホルムズ海峡——世界の石油輸送の約20%が通過する要衝——が事実上の閉鎖状態に入り、国際エネルギー機関(IEA)が「記録上最大の供給ショック」と表現するほどの混乱が生じました。
原油の国際指標価格であるWTI先物は、攻撃前日の2月27日には1バレル67ドル台で推移していましたが、3月末には118ドルまで急騰。2026年4月28日時点では102ドル台と高止まりが続いています。年初来ではWTIが約22.5%、ブレント原油が約56.4%上昇しており、この価格上昇がガソリンや電気代に転嫁されています。
UAEのOPEC離脱はガソリン価格にどう影響するのか
UAEは2026年5月1日にOPECを正式離脱しましたが、ホルムズ海峡が閉鎖されている現状では、増産しても輸出できないため、短期的なガソリン価格の押し下げ効果は限定的です。
2026年4月28日、UAE政府がOPECおよびOPECプラスからの離脱を発表しました(5月1日発効)。60年にわたるOPEC加盟に終止符を打った理由は主に2つです。
1つ目は、UAEの国営石油会社ADNOCが推進してきた生産能力拡大(日量500万バレル以上)と、OPECの減産要請との矛盾です。UAEは将来的な石油需要の減少を見越し、地下資源が「座礁資産」化する前に早期に売り切る戦略を採っています。
2つ目は、盟主サウジアラビアへの不信感と、イラン情勢をめぐる対立です。
ただし現時点では、UAEが増産しても輸出の主要ルートであるホルムズ海峡が閉鎖されているため、市場への供給増加効果は限定的です。UAEはホルムズを経由しないフジャイラ港からの輸出ルートを持っており、日本への原油供給に関しては比較的安定したルートが維持されています。
原油価格はいつ下がるのか——専門家の見通し
EIAは2026年第2四半期に原油価格がピーク(ブレント115ドル)を迎えた後、年末にかけて88ドル台へ緩やかに低下すると予測しています。
米エネルギー情報局(EIA)の2026年4月時点の短期エネルギー見通し(STEO)によると:
| 時期 | ブレント原油予測価格 |
|---|---|
| 2026年Q2 | 115ドル(ピーク) |
| 2026年Q3 | 91ドル |
| 2026年Q4 | 88ドル |
| 2026年通年平均 | 96ドル |
| 2027年通年平均 | 76ドル |
野村証券のエコノミスト・髙島雄貴氏は「2026年内のWTI先物価格は75〜95ドルのレンジで推移しやすい」と指摘。ホルムズ海峡の航行が正常化されれば価格は下落するものの、エネルギー施設の損傷から完全回復には時間がかかるとしています。
ガソリン価格が下がるために必要な3つの条件

ガソリン価格が落ち着くには、①停戦の定着②ホルムズ海峡の正常化③OPEC+の増産——この3つが揃う必要があります。
①イラン情勢の停戦定着
4月初旬に一時的な停戦合意が成立しましたが、ホルムズ海峡の通航はまだ正常化されていません。トランプ大統領は交渉継続を示唆しており、停戦が定着するかどうかが最大のカギです。
②ホルムズ海峡の航行正常化
仮に停戦が成立しても、ホルムズ海峡を通るタンカーが安全に航行できるようになるまでには時間がかかります。正常化の確認なしには、原油価格の本格的な下落は見込みにくい状況です。
③OPEC+の方針
OPEC+は5月に日量20.6万バレルの生産調整を実施する方針を示していますが、情勢次第では増産を停止する可能性もあります。UAEが離脱したことでOPECの結束力は低下しており、今後の方針が不透明になっています。
日本のガソリン価格への影響
日本は原油輸入の93.5%を中東に依存しており、ホルムズ海峡の閉鎖は直接的な影響を受けます。ただしUAEのフジャイラ港ルートは海峡を経由しないため、対日供給の一部は維持されています。
日本はホルムズ海峡への依存度が特に高い国です。一方で、UAEのフジャイラ港はホルムズ海峡を経由せずにオマーン湾から直接輸出できる設備を持っており、UAE産原油については一定の代替ルートとして機能しています。ただしJETROの分析によると、停戦が成立しても「法的・政治的な解放と商業的な通航の常態化の間には時間的・構造的な乖離が残る」とされており、完全な安定を見込むには至っていません。
経済産業省はガソリン価格の激変緩和措置(補助金)を継続しており、市場価格の上昇をある程度緩和していますが、補助金の上限や継続期間については今後の動向を注視する必要があります。
まとめ
ガソリン価格が下がるには、イラン情勢の停戦定着とホルムズ海峡の正常化が不可欠です。EIAの予測では2026年後半にかけて原油価格は緩やかに低下する見通しですが、停戦交渉が長引けば高値圏が続く可能性もあります。UAEのOPEC離脱はホルムズが閉鎖されている間は供給増の効果が限定的で、価格を即座に押し下げる材料にはなっていません。当面はホルムズ海峡の航行状況と停戦交渉の行方が、ガソリン価格を左右する最大のポイントです。
本記事はEIA短期エネルギー見通し(2026年4月)、野村證券レポート(髙島雄貴)、Bloomberg、Al Jazeera、Trading Economics、時事通信の情報をもとに作成しています。本記事は情報提供を目的としており、投資判断の根拠となるものではありません。

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